バイクをご自身で整備する方はこんな絶望の瞬間が必ず訪れるかと思います。
「ネジが固くて回らない・・・」
ご自身のオートバイが新車の状態でしたらあまりないかも知れません、が中古車や古いバイク、保管状況が良くなかった物なんかは1箇所のみならず数箇所も!なんてことも珍しくない話です。
今回はそんな固くて取れないネジの外し方の話をします。ヘルメット関係なくてすいません。私個人のメモ程度に考えていたのですが皆様に有効に使ってもらえたらと思い、公開します。
よかったら読んでみて下さい。
あと確認なのですが、今回は「ネジ」の外し方です。(ボルトじゃないよ)
コレらがネジで
ボルトはこういうやつです。(厳密には「ネジ」という大枠の中にボルトがあるのですが)
ボルト編は別の話で紹介してるのでよかった読んでみてください。
【 目次:Contents 】
固着したネジを外す手段一覧
ドライヤー・バーナー等で温める
鉄の熱膨張を利用して摘出する手段。
一旦温めて膨張させる⇨冷えて収縮する この時にできた隙間を利用しようというもの。
温める方法としては
- ガスバーナー
- ヒートガン(ない場合は時間かかるけどドライヤー)
- アイロン
などがある。
ネジが木材に刺さっているなどの場合は燃えてしまわないように当て布をしてアイロンなどで温めてあげよう。
ヒートガンなどあれば比較的簡単に温めることが出来るが、他にあまり用途がないなら買うのは少し勿体無いかも。(ステッカー剥がし・塗装やパテの乾燥・フィルムを使ったシュリンク包装・熱収縮チューブの収縮作業 などがやりたいなら買い)
ガスバーナーは用意が簡単、用途は色々あるのであっても困ることはないかも。取り扱いには気をつけて。
貫通ドライバーで頭を叩く(ショック/インパクトドライバー)
貫通ドライバーと非貫通ドライバーの違いは下の図のようになる。
この方法は貫通ドライバーの「座金」をハンマーでぶっ叩いて衝撃をネジに与えて取るというもの。
これも結構有効な手段でまずは試してみて欲しいものの一つ。
非貫通ドライバーを叩くと柄の部分が割れてしまうので貫通ドライバーなのをしっかり確認しよう。まあ「座金」が付いていれば大体貫通ドライバーだろう。
ショックドライバー
ショックドライバー(インパクトドライバーとも)なる工具は衝撃を回転力に変換してくれる優れもの。
横向きなどで体重がかけられない状況などはこのショックドライバーが活路を開いてくれることが多い。
ベッセルのメガドラは値段も手頃で使いやすい。
ちなみにショックレスハンマーを使うと反動が少なくて扱い安い。
金属製のハンマーは衝撃がそのまま伝わるためネジへの負担も多いので完全に上級者向け。だがそのかわりに威力も高い。
ボルスター付きドライバーを使用
ドライバー軸の根元に、レンチを掛けて回すことができる、「ボルスター」と呼ばれるものが付いている。
コレによって回す力が格段に上がるので、強いトルクがかかったネジでも外すことができる、、、がその分ネジの頭をナメてしまいやすくなるのでしっかり押す力をかけてあげよう。
ネジザウルスで回す
お馴染みの方も多いのではないだろうか。みんなの恐竜「ネジザウルス」
ホームセンターでもよく見かけるこやつを使ってみよう。
ネジの頭をナメた後に使うイメージが多いがその前にでも十二分に活躍してくれる。それにコレ使えばナメる心配もないしね。さらに引っ張りながら回せるので空回りしてしまって取れないネジにも有効。
同じ株式会社エンジニアさんから出ている「ネジザウルスリキッド」はサビを落としてくれる強力な製品なのでサビが酷い場合はこちらも検討してみて欲しい。
【液体・スプレー・泡】と3タイプがあるけど個人的に泡タイプがわかりやすくて好きかな。匂いがきついのでしっかり換気できるところでやってほしい。
またあんまり酷いサビは何回か繰り返してやらないといけない為、時間の余裕もみておこう。
かなり握力も必要なので握力も日頃から鍛えておこう。
ラスペネ を吹き付ける
株式会社 和光ケミカルから出ている製品シリーズ「WAKO’S(ワコーズ)」が誇る
業務用浸透防錆潤滑剤 RP-C ラスペネC 通称「ラスペネ」
正直、潤滑剤なら呉工業株式会社の「KURE CRC 55-6」が有名だと思う。
認知度も高く、値段もラスペネに比べたらめちゃくちゃ安いのでこちらを使っていたが、知人からラスペネを貰い使った時は衝撃が走った。
いやまあ、気になってはいたものの高いから手が出なかったのだが、ここまでとは、、、
しかも少量ですごく浸透してくれるので全然減らないのでむしろお得かもなんて思っている。
KURE 55-6も素晴らしい製品なので各種のメンテナンスに使用している。安くてとても助かっている。
固着した部分に関しては
55-6 で可能性を感じられない ⇨ ラスペネ登場 とこんな感じで使っている。
見た目でもうサビが酷い時はネジザウルスリキッド泡タイプ、こういう使い分けになると思う。
吹き付けてから馴染むまで少し待つのがポイント。
基本は7:3の法則
ネジ=回す という連想をしてしまう方も多いかも知れないが、絶対に覚えておいて欲しいのは「押す力:回す力=7:3」と、押す力の方が圧倒的に大事ということ。これを間違うとこの後紹介するネジの頭が潰れるといった無惨な結果が待っている。
もちろんこの法則は絶対ではなく、ねじが軽く回る場合は押す力を弱めても大丈夫。逆に、固く締まったねじを緩める場合は押す力をさらに大きくするなど、7:3の法則を軸に柔軟に対応していくことが整備力UPに繋がる。
ネジ穴を潰してしまったあなたへ
ここからはネジの頭を潰した・ナメた・カムアウトした時に参考にしてみて下さい。
ネジの頭が軽傷なら輪ゴムや滑り止め液
まだ+などの引っ掛かりが生きている場合、幅の太い輪ゴムや薄いシリコンシートなどをドライバーとネジの間に入れて摩擦力を上げる方法。
あくまでこれは家にあるものでなんとかしようという段階。
本格的には「ネジの頭に塗る滑り止め」が結構有効になる。※潰れが軽傷の場合
ネジだけでなく、ボルトにも使用できる。
もちろん潰してしまう前に、固くて取れにくいと感じたらナメ防止に使うことをおすすめする。
ネジ頭がつかめる場合はネジザウルスを使って回す
やっぱり我らがネジザウルス。この使い方の方がしっくりくる方も多いかも知れない。
ネジの頭をしっかり掴んで回して欲しい。
二度目だが、握力も必要なので握力も日頃から鍛えておこう。
ネジザウルスバズーカーで回す
絶対に頭をナメてはいけないネジが皿ネジ
コレをナメてしまうとネジザウルスで頭を掴むことができない・・・
そこで出てくるのが「ネジザウルスバズーカ」
先端のビットが「軽傷用」と「重傷用」に分かれており、「軽傷用」はわずかに残った切れ目に固定し叩くことなく外せる。
「重傷用」はハンマーで叩き引っ掛けポイントを作り外す道を切り開くことが出来る。
六角穴用もあるので結構頼もしいツールの一つ。
ネジ穴が完全につぶれたときはネジ穴を作ってショックドライバー
先ほども紹介した「ショック/インパクトドライバー」だが、今回のは先に特殊な先っぽを叩き込んで溝を作り、それを利用して「ショック/インパクトドライバー」で回す方法。
なくなったらまた作れば良いのさ、溝なんて。の精神でしっかり溝を作ってあげて欲しい。だがくれぐれもやり過ぎは禁物。ネジとの対話に集中しよう。
ネジに穴を開けて救出
ここからは「電動ドリル」という工具が必須になる。ついに人類の力を超えたものに手を出さねばならなくなったということだ。事態はそれほど深刻だと受け止めてほしい。
「電動ドリル」はピンからキリまであってどれを選んで良いのか正直困ってしまう。が、そこまでこだわりがないなら安いものでも良いと思う。けどコードレスは絶対に便利なので譲れない。
アイリスオーヤマなんかが結構ビットも揃っているのを出してるのでそれなんか良いと思う。トリガーの加減で回転調節も出来るし。
話は逸れたが、今回のミッションはネジに細いドリルで穴を開けてそこに特殊な「ネジ外し」をねじ込んで救出するもの。
真っ直ぐに穴を開けないとポキンと折れてしまうのでゆっくり落ち着いてレスキューしよう。
ネジをドリルで破壊する
もう良いんだ、ここまでやってだめだったんだから、、、助けるのは諦めて、破壊しよう。
そんなわけで破壊対象よりワンサイズ小さめのドリルでネジをガツガツ掘っていく。
ゆっくり進めていけば、感覚が少し軽くなるのが終わりの合図。止めているものが無くなるのでパカっと取れたり、外れたりするだろう。
お疲れ様でした。
固着を予防する
今回苦労して外した「固着」したネジ。
二度とこんな思いをしなくて済むように固着の防止をこの際にやっておく事をオススメする。
ネジが固着する原因としては「サビ・ゴミ・焼き付き」の三つ。
ゴミを除去する
最初に鉄粉や砂利などの「ゴミ」を噛み込んで固着してしまうことを予防する。
まずは外したネジをチェックして再利用可能かどうかを選別しよう。
腐食が酷い場合や、ネジ山が欠けているものは新品に交換して欲しい。再利用するモノはキレイ掃除して上げよう。
パーツクリーナーなどを使えば作業はグンと楽になる。
ネジのメス側(差し込まれる側)も綺麗にしておけば「ゴミ」の問題はまあ解決だろう。
サビを予防する
次に「サビ」だ。
保管状況によってはサビは避けられないのでここでしっかり予防しておこう。
ちなみにサビないからという理由でステンレスのネジやボルトに交換する方もいるかも知れないが、鉄が主であるクルマやバイクにステンレスのボルトやナット、ネジを使うと電食(電蝕)と呼ばれる現象が発生し、逆にサビやすくなってしまうので注意して欲しい。メッキの鉄製が無難だと思う。
安心で安いKURE
我らがネジザウルス
これらを吹き付けておけばかなり錆びづらくなる。定期的にやって上げるのが大事。
焼き付きを防止する
最後に「焼き付き」
エンジン周辺や、マフラー周辺などはかなり高温になり、ボルトやネジが膨張を繰り返し「焼き付き」という固着を引き起こしてしまう。
このような場合は「焼き付き防止グリス」を使って上げよう。このタイプのグリスは高温下の熱でも飛ばずに残るので、ネジ部を保護し金属の焼き付きや固着を防いでくれる。
コレは安定のワコーズさんのグリス。容量もたっぷりなのでヘビーユーザーでも安心。
パーマテックス社はアメリカで有名なケミカルブランド。容量は少ないが高品質で少量でも薄く広がるので十分に使える量となっている。
終わりに
今回は整備好きが必ず直面するネジの固着を外す、の話でした。
ここまで紹介してきた通り、人類と固着したネジの戦いの歴史は長く、問題に直面する度に新たな武器を作り、奴らをなんとかしてきたことがわかって貰えたと思う。
大事な愛車も、ネジの一本から気にかけてあげると、ライダーにしっかり応えてくれるマシンになってくれるかも知れない。
そして何度もネジをナメて来た私の個人的に最強だと思うのが
ラスペネとショックドライバーのコンボ。幾度となくこいつらに助けられました。
そして今回はネジだったあなた。「ボルト」の話も読んで予習しておくといいかも。似ているようで、結構違うので。
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それではまた別の話で。
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